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2017年05月18日
我が国企業が誇る機微技術の管理のあり方
昨日の参議院本会議で、経済産業省が提出した「外国為替及び外国貿易法(外為法)の一部を改正する法律」が可決・成立しました。今国会にて重要法案が数多く審議されていますが、中でも本改正は最も重要な法改正の一つにあたるものと個人的に考えています。
ここ1~2年の間でも、米国のマイクロン・テクノロジー社やドイツのアイクストロン社などの半導体企業を中国企業が買収しようとした動きが米独政府により阻止された例にも見られるように、近年、事業の国際化が加速する中で、安全保障上機微な技術が海外へ流出する懸念が大きくなってきています。
こうした中で、我が国も、従前から、国際的に平和や安全の維持を妨げる貨物輸出や技術提供を許可制にしたり、国の安全を損なう対内直接投資などを審査付き事前届出制という形で規制していますが、実効性が必ずしも十分に担保されておりませんでした。
工作機械、炭素繊維、パワー半導体、特殊な合成樹脂など、我が国の企業が優位性を誇る分野は数多く存在します。現在経営難に陥っている東芝のような企業は単なる一企業ではありません。そこで培われた技術や人のあり方については、国家としてしっかりと注視していく必要があります。外為法による技術管理などの面での規制について更なる実効性を担保するために、今回、罰則や行政制裁を大幅に強化し、また、投資規制の対象も拡充しました。
資本主義社会において、投資の自由や予見可能性は最大限確保されるべきですし、我が国としても対内直接投資を呼び込むべく政策努力を重ねてきています。その姿勢は今後とも堅持すべきと考えますが、前回のブログでも書いた通り、「安全保障」を様々な角度から捉え、国益を確保していくことも同時に求められています。今回の法改正はその意味で我が国の国益に資することになると考えますので、今後のしっかりとした運用を期待します。
2017年05月9日
二国間通貨スワップ取極に係る新提案について
久しぶりのブログ更新です。
連休中に横浜でアジア開発銀行(ADB)総会が開催されました。そのサイドイベントとして、麻生副総理が議長を務める日ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議が行われました。
そこで日本政府は、金融危機に陥り短期流動性が失われそうになるASEAN各国に対して、日本が「円」を供給する仕組み(二国間通貨スワップ取極)を新たに提案しました。
ASEANへの日本企業の進出も進む中で、「円」の調達をしやすくすることで域内の金融安定に貢献するもので、私は、非常に評価に値する提案だと捉えています。
そもそも、グローバルな金融セーフティネットとしては、次の4段階があるとされています。
①IMF(国際通貨基金)
②地域金融取り決め(従来のチェンマイイニシアチブ)
③二国間通貨スワップ取極
④外貨準備
今回の日本提案は③にあたります。
既に③の取極は存在しますが、ドル建てです。これに円での引き出しも選択的に可能とするものです。
中国も同様の取り組みを通じ、人民元の国際化を積極的に進めようとしています。ただ、人民元は貿易決済の手段としてはニーズが増えていますが、金融危機などのいざという時に頼れる通貨(ハードカレンシー)としては、アジアでは「円」しかありません。
やや専門的なテーマでもあるので、思ったほど報道はなされておりませんが、日本がアジア各国、地域の金融安定化のために積極的に貢献することを通じ、良い意味で、アジアにおける日本の存在感を高めていける今回の財務省の提案。
外交は決して外務省だけがやればいいというものではありません。オールジャパンで日本の国益に資する外交を追求していくべきです。