欧州版IMF
こんにちは。
こばやし鷹之です。
暫くご無沙汰してました。
自分の事務所をゼロから立ち上げるのは、思っていた以上に大変で、組織に属していた時には誰かがやってくれていたことを全て自分で対処しなければなりません。
それも楽しくやっているのですが、少々時間に追われていました。
台風がかなり接近してきたようですね。
風雨が強まってきました。
気温も低いですから、みなさん、気をつけてくださいね。
温かい部屋で家族団欒する良い機会かも。
しばらく更新を滞っていたので、色々と書きたいことはあるのですが、今日は国際金融ネタです。
先日のEU首脳会合で欧州版IMFの設置に向けた合意がなされました。
「欧州版IMF」と言われても、普通はピンと来ないと思います。
そもそもワシントンに拠点を置くIMF(国際通貨基金)って何のためにあるの?ということですが、分かり易く言えば、「ある国が緊急に資金を必要としているけれど、信用がなくて他国政府や市場から資金を調達できない時に、一定条件の下でお金を融通してくれる金融機関」ということになります。
そのIMFの欧州版を今回作ろうということになったわけです。
何故か?
先般のギリシア危機の反省です。
これは何かと言えば、
借金残高(ストック)が膨らみ、財政赤字(フロー)も一向に減らないギリシアに対して、本当に借金が返せるのか?との不安が市場に広がったんですね。
そうすると、ギリシアに資金を貸し付けていた人は、もう資金を貸さなくなります。
本来、普通の国は、借金の返済期限が到来すると、「借り換え」といって、新たな借金をして古い借金を返します。
時間をかけて少しずつ残高を減らしていくんですね。
でも、新たな借金ができなくなれば、古い借金を返せなくなるわけですから、倒産してしまいます。
仮に、ギリシアが倒産(=借金を踏み倒す)することとなれば、欧州各国の金融機関がギリシアに対して保有する巨額の債権は紙切れになってしまう。
そうすると、各金融機関の財務状況が悪化して、各国において金融不安が広がり、大変なことになってしまう。
ドイツやフランスのように、政府が金融機関を助けられる力を持つ一部の国を除くと、経済が大混乱する結果となるわけです。
こんな結末を回避するために、ギリシアに対しては各国から金融支援が行われ、何とか危機は回避されたわけですが、この反省に基づいて、域内国が同様の事態に陥った時に速やかに支援できる仕組みを構築しておこうというのが今回の欧州版IMFということになります。
以前、国際金融の仕事を担当した人間の感覚から言えば、欧州版IMFの設置に至るためには、乗り越えなければならないハードルがたくさんあります。
会議で決められた2013年までの設置の実現可能性は未知数です。
でも、今回設置の合意に至ったことだけでもすごいと思うんですね。
今から10年以上前。
1997年にアジア通貨危機が起こりました。
その反省を踏まえて、日本がアジア通貨基金(AMF)構想を打ち上げ、日本主導で設立に向けた動きが始まったんですね。
でも、最終的には頓挫しました。
本体であるIMFと機能がかぶってしまうため屋上屋を架すことになるという表向きの理由もありますが、アメリカと中国の反対にあったというのが実情です。
自らの息のかかったIMFとは別にアジアで勝手な動きを許したくないアメリカと、日本がアジアの覇権を握ることを恐れた中国とが、歩調を合わせたわけです。
呉越同舟ですね。
日本は掲げた旗を降ろさざるを得なくなったわけです。
国際金融に限らず、何事につけても、この小さな島国は巨大な中国とアメリカとの間で難しいポジション取りを迫られてきています。
中国との関係で日本を味方に付けておかねばならない米国と、米国をけん制するためにも日米関係にくさびを打ち込みたい中国。
今の政権運営を見ていると、右と左をキョロキョロ見ながら、顔色を窺っているようにしか見えませんから、他の国々の目にも、今の日本は、米中関係という大きな海原の中でただ漂流を続ける小舟に映っているに違いありません。
でも、その日本丸には1億2000万人もの乗客が乗っているんです。
座礁や難破をするわけにはいかないんです。
そういう大国の間に挟まれているからこそ、レバレッジを効かせられる点もたくさんある。
自ら有利な状況を創っていくことだってできる。
そのためには、まずこの船がどこに向かおうとしているのか明確にしなければ自力で航海を続けることはできません。
それを明らかにするのが政治の役目です。
(欧州版IMFから話がそれてしまいましたが・・・)