タクシーの運賃改定の是非を通して考えること
先日、自民党タクシー・ハイヤー議員連盟の総会が開かれ、運賃改定について添付の決議をした上で、同日、衛藤消費者担当大臣に要望活動をしてまいりました。
今般の消費税率の引き上げ時に向けて、全国の多くの地域において、タクシー運賃の改定について関係者の協議会を立ち上げ、検討が行われてきました。その主な内容は、消費税率の引き上げに相当する運賃の改定に加え、近年のタクシー業界を取り巻く環境変化に起因する改定(実質改定)を行うことに関するものです。
訪日外国人の増加(インバウンド)に伴う外国語対応や、これから進むであろうMaaS(「マース」。モビリティ・アズ・ア・サービスの略。)への対応、これまでの(消費税率の引上げを含めた)運賃改定のたびに行うメーターのチップの交換など、タクシー業界による設備投資額は引き続き増加していくでしょう。
また、政府が主導する働き方改革に伴い、労働時間が制限される中で、歩合制で働くドライバーの方の収入にも制約がかかることになります。結果として、ただでさえ厳しい人手不足の状況に拍車がかかり、人材確保のために処遇の改善も必要となってくるでしょう。
こうした中で、今回の消費税率引き上げに合わせたタクシー運賃の実質改定は見送られることとなりました。理由は、消費者庁を含めた複数省庁から、実質運賃の改定については「慎重であるべき」との回答が寄せられたからと聞きました。
しかし、例えば、北海道においては、同じ公共交通機関であるJR北海道については、この度、実質改定の引き上げが認められたとのこと。赤字経営であることは、中小・零細企業が殆どの北海道のタクシー業界も同じです。今回のような実質改定を認めないとすれば、特に、地方において、高齢者を含めた住民の方々の「足」を確保し続けることはますます困難になっていくものと思われます。
確かに、利用者(私もその一人ですが)の立場からすれば、同じサービスを享受するのであれば、一円でも安い方が良いに決まっています。しかし、その事業の継続が困難になれば、私たちが利用することができなくなる。サービスが提供されなくなるわけですから当然のことです。
世の中は消費者や利用者だけで成り立っているわけではありません。生産者、流通業者、廃棄業者等々、様々な関係者が存在します。これはタクシー業界に限ったことではなく、例えば、おいしく、安全な農産物を提供していただきながらも、価格の低迷が続く、我が国の農業もその例にもれません。
多くの関係者の方々がその努力に見合う適正な価格がついてこそ、社会はしっかりと成り立っていく、その当たり前のことをしっかりと肝に銘じつつ、これからも活動を続けてまいります。