地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)改正について
地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)の改正の議論にあたって懸念すること
今朝、党本部において環境部会と環境・温暖化対策調査会の合同会議が開催され、小泉大臣をはじめ環境省の皆様との間で通常国会提出予定法案について議論がありました。
そのうちの一つである地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)の改正案について私なりの問題意識があるので、環境部会という場の雰囲気をわきまえない発言になるかもしれないとの前提の下、様々な角度から議論を詰めていくことが政権与党たる自民党のあり方だと思い、あえて一石を投じました。以下の発言の通り、根本的な点を政府に確認しました。
〇 2050年に温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すことが、政権の主要テーマであることは理解しているし、また、国際会議などで少なくとも欧米から表面的には称賛されるとは思う。しかし、カーボンニュートラルを推進することによって、「トータルとして」日本の国益にどのように資するのか、すなわちどのように国が豊かに、そして強靭になるのかについて、政府の根本にある思想が見えてこない。昨年末のグリーン成長戦略にも、何故そこを目指すのかという根本的なところに関する記述は無かったように思う。
〇 例えば、太陽光発電をさらに進める事になると思うが、そうすると世界のトップシェアを誇る隣国の太陽光パネルが売れることになる。再エネの主役として洋上風力発電を推進する方向だが、日本のメーカーは既に撤退している。EV(電気自動車)も増やしていく方向だが今のままだとバッテリーもCATL(中国)やテスラ(米国)製が中心になる。CO2排出量がエネルギー産業に次いで多いのは日本経済を支える鉄鋼業や化学工業などの製造業。
排出量削減は日本経済の減退につながるのではないか。こうした問いに対してはESG投資やイノベーションという答えがあるのだろうが、そうした投資で儲けるのは一体誰なのか。など疑問が色々と湧いてくる。
〇 2050年という年限を「政治的に宣言する」ことを超えて、「法律に書き込む」ということになれば、自らの手足を必要以上に縛ってしまうことにならないのだろうか。その点についての政府の考え方と、他国で法律に年限を明記している国があるのかを教えて欲しい。EUはじめ各国は国益を確保するからタテマエとホンネを使い分けている。日本もしたたかに国益を追求する姿勢が必要だと考える。
〇 最も懸念するのはエネルギーの安定供給。先日の寒波でも、備蓄に適さないLNGは不足、石炭火力はダメ、再エネは天候が悪く発電量が不足、といった原因が重なり、電力業界が慌てふためく事態を見ていると非常に心もとなかった。また、今後はデジタル社会を推進していく必要があると思うが、データ通信量やそれに伴う電力消費量は爆増する。省エネの革新的イノベーションを起こすというが、エネルギーは安全保障そのものなので、仮にイノベーションが起こらないという悲観的シナリオにおいても国民生活をしっかり支えられるだけの電力供給体制を整えておく必要があると思う。
かなり前から、政府に対しては、いくつかのシナリオを作って試算するよう求めているが、いまだしっかりとした試算は出てきていない。発電量の50%以上を再エネで賄うという、電源割合ありきの進め方ではなく、将来の電力需要を想定した上で国益にかなう電力供給はどうあるべきかを考えるべきだと思う。原子力の再稼働も進まないまま、再エネを強力に推進するとひた走ることで本当に大丈夫なのか。