宇宙利用に関する法整備について②
ルール整備に関連して、もう一点記します。
それは、SSA(Space Situational Awareness = 宇宙状況監視)です。
宇宙空間における人工衛星の活用は、測位、通信、気象、放送、偵察など多岐に亘ります。宇宙利用国の増加に伴い、また、民間企業による宇宙活動も活発化する中で、衛星の数が近年急速に増加しており、今後打ち上げられる予定の衛星は2万基とも言われています。これらの衛星を安全に稼働させる観点からは、既に役割を終えた衛星を含む「デブリ」と呼ばれる宇宙ゴミによる衝突を回避し、更には、人工衛星に接近して妨害・攻撃・捕獲する「キラー衛星」から衛星を守るためにも、SSAは非常に重要であり、宇宙安全保障能力の中心となります。
SSAの目的は、こうした人工衛星同士の衝突回避に留まらず、「物理的、電波的障害を受けることなく、安全に宇宙にアクセスし、運用し、および帰還するため」のSTM(Space Traffic Management = 宇宙交通管制)につながるものでもあります。
米国では、民間企業のSSA技術が急速に発展し、民間企業によるSSAサービスが活発になっています。米国政府や産業界はこうしたサービスを利用しており、STMを主導する機関も国防省から商務省に移りました。今後、その役割は政府から民間企業に移行する模様です。こうした動きに伴い、米国では宇宙活動のルールの必要性やSTMのスタンダードを米国が主導していくための方策の検討が行われています。
一方、我が国のSSAは、現在、防衛省がJAXAや米空軍と連携をしつつ対応していますが、その情報の大半を米軍に頼っており、我が国自身の能力向上は喫緊の課題です。今後、防衛省としては地上から制止軌道を監視するためのレーダー設置や2022年めどで、SSA衛星(地上からではなく宇宙から宇宙の状況を監視する)を打ち上げることまでは決まっています。
私は、我が国としても早急に宇宙活動のためのルール作り、特にSSAについてその先をも見据えた対応を速やかに検討する必要を感じています。端的に言えば、防衛省・JAXA・米国に加えて、民間企業との連携です。我が国の民間企業においては、SSAの試行がスタートしていますが、米国をはじめ他国の民間企業も含めると、今後、民間企業が収集するSSAデータは膨大なものとなるでしょう。安全保障上の観点からも、今後、政府のみならず、民間企業のSSAデータも国として一元的に把握するための組織のあり方や法整備が必要です。
そして、すべてのデータのうち、どれを非公開にし、どれを利活用に資するよう公開するか、いわゆるオープン・クローズ戦略も。そして、その先にはSTM(Space Traffic Management = 宇宙交通管制)もあります。
党の中に、宇宙法制に関するプロジェクトチームを立ち上げましたので、しっかりと議論を重ねてまいります。