情報通信インフラに関する国家戦略を!
平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿としてSociety 5.0が提唱されました。今後、IoTで全ての人とモノがつながり、あらゆる情報がデジタル化され、そのビッグデータがAIにより分析・解析されることを通じ、新たな価値や社会変革(イノベーション)が創出され、少子高齢化や地方の過疎化等がもたらす閉塞感の打破、希望の持てる社会の実現を目指すこととされています。
こうした中、次世代通信といわれる第5世代移動通信システム(5G)が、新たな社会インフラとして期待されています。我が国においても、5Gを駆使することによって、自動運転、スマートシティ、遠隔医療、製造プロセス全体を最適化するスマートファクトリーなどが研究され、実証実験に入っているものもあります。
このように、あらゆるものがネットワークに繋がると、2030年には世界のデータ量は現在の約7倍に膨れ上がり、ネットワークに繋がるデバイスも500億台にも達するとの予想もあります。また、データはIoTデバイスからのものだけではありません。人工衛星が取得したデータとAIを組み合わせることにより、農作物の生産調整や経済動向の予測などの新たなサービスも期待されることから、今後人工衛星から取得されるデータも併せればその量は膨大なものとなります。
さらに、自動運転や遠隔治療などは通信の低遅延が求められることから超高速通信が可能となるインフラが必要になってきます。
従って、5Gに移行するには、少なくとも現在の10倍以上の5G基地局の整備が必要であると共に、ギガビット/秒クラスの通信速度とミリ秒以下の遅延を可能にするためにも、多数の基地局を接続し、また、データの集積・解析機能を有するデータセンターに繋ぐ光ファイバーネットワークの整備が不可欠です。
さらに、自動運転などの素早いレスポンスを必要とするIoTデバイスが今後増加するに従い、従来のクラウドコンピューティングでは対応できなくなることが予想されます。これを解決するためのシステムが、エッジコンピューティングとそれに伴うマイクロデータセンター(サーバー、電源装置、冷却装置等をすべて収容したモジュール型システム)が必要になります。
このように、情報通信インフラの整備を推進するにあたっては、5G基地局と光ファイバ網のみならず、ビッグデータを集積するデータセンター、エッジコンピューティング、海外との情報通信に不可欠な海底ケーブル等も含めて幅広く検討していく必要があることに加え、サイバーセキュリティ・災害・テロ等に関するリスク管理の強化(強靭化)、サプライチェーンリスクの低減やインフラシステムの輸出を視野に入れた国内産業・人材の育成、膨大な消費が想定されるエネルギーの安定供給等の諸課題についても喫緊の対応が求められています。
こうした認識の下、5G及びポスト5G社会の到来を見据えた情報通信インフラの整備のあり方について、様々な角度から検討を加え、具体的な国家戦略を描き、その速やかな実現を目指していかねばなりません。そして、その骨格を作るのは政治の責任だと考えています。