憲法記念日にあたり
「憲法記念日にあたり」
昨年の5月3日の安倍自民党総裁の発言を契機に、この一年間、自民党内で憲法改正に向けた議論は加速してまいりました。
そもそも憲法とは、その国の本質やあるべき姿が描かれるものです。それと同時に、現在の日本国憲法は第98条に規定されている通り、我が国の最高法規です。法規、すなわちルールである以上、「生き物」です。国の内外の情勢が大きく変化したとすれば、それに応じて変わるのも当然です。
憲法制定時の70年前と比べれば、私たちの生活水準も、産業構造も、人口動態も大きく変わりました。国を取り巻く環境も、冷戦が終わり、中国を始めとする新興国の台頭、テロの脅威、地球温暖化など、大きく変化しました。
こうした背景の下で、現行憲法の規定の中には時代の要請に合わないものが少なからず見られます。
私たちに現行憲法を一度も変えた経験が無い中で、自民党としては下記の4点の改正項目に絞って精力的に議論してまいりました。
・自衛隊の明記
・緊急事態条項
・教育の充実
・参議院の合区(ごうく)の解消
自衛隊の明記について。
今回、憲法9条については一切手を加えようとするつもりはありませんが、我が国においては憲法上、また、法律上、大きな制約がありながらも、25万人の自衛隊の隊員の皆さんが24時間365日、私たち国民の目となり、耳となり、国防の任にあたってくれています。
国民の9割以上が自衛隊を評価しながらも、憲法学者の多くがいまだに自衛隊違憲論を唱え、
また、公立の小中学校で使用される教科書の大半に、自衛隊違憲論もある旨が記載されているという現実。
その中で、自衛隊の皆さんは、大規模災害、有事、あるいはそれらの複合事態の際には、真っ先に現場に駆けつけ、国民を守り、国を守ってくれる。
そして、自衛隊に命令を下すのは、最高指揮官である内閣総理大臣。その時々の総理は、自衛隊違憲論がある中で、国民と国を守るために彼らに現場での対応を命じなければならない現実。
こうした状況を看過することが許されるのか。国民の負託を受けた国会議員の一人として私にはどうしてもそうは思えません。
自衛隊員を支えているのは、彼らの誇りであり矜持です。自衛官のお子さん達も、お父さん、お母さんの背中を誇りを持って見て、育って欲しいと思います。そのためにも、自衛隊の明記をすべきと考えます。
緊急事態条項についても、大規模な自然災害が生じたり、武力攻撃を受けたとしても、その時点で衆議院が解散されていた場合には、衆議院議員が誰一人としていない事態となり、その状況下でも選挙を行わなければなりません。こういう事態を想定した規定がそもそも存在しないのです。
近年、地震や火山の噴火などの自然災害が増えている上に、我が国を取り巻く安全保障環境も急激に変化する中で、国会議員の任期等の特例を設ける事により、緊急事態においても立法府が機能できるようにするべきと思います。
憲法改正を考える上で、最も基本的かつ重要なことは、改正するもしないも、決めるのは国会議員ではなく、国民の皆さまであるという点です。
私たち国会議員にできることは、自民党だけでなく他党ともしっかり議論し、発議(=提案)することまで。最後は国民投票なのです。幅広い合意形成と国民の皆様のご理解が必要なのです。
だからこそ私は地元の国政報告会で、必ず憲法改正について触れるようにしています。憲法について、みんなでもっと考えたいし、これからも考え、議論することによって、憲法をより身近に感じるきっかけを作っていくつもりです。
国会が1日も早く正常化して憲法改正について本格的な議論が始まることを期待しますし、私自身、国民の負託を受けた国会議員の一人として、特に衆議院の憲法審査会の委員として、憲法改正の発議ができるよう努力してまいります。