我が国のインフラ海外展開について

これまでの我が国のインフラ展開については、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想の下、質の高いインフラ投資(伊勢志摩5原則)を基本としつつ、個別案件を各企業や各省庁が個別に進めていくものでありました。2013年の経協インフラ戦略会議にて2020年のインフラシステムの受注目標額を30兆円(2010年約10兆円)と設定し、着実に額は伸び、成果は出てきています。しかし、省庁間・省庁内の連携が十分とは言えず、かつ、日本として取り組みやすいエリア・分野に偏る傾向があるように見えます。

また、インフラ海外展開に関する競合国の中には、大きな戦略の下、動きを加速化させる国もあるなど、今後の競争激化は必至です。FOIPと個別案件の間の「戦略(=基本的な方針)」を改めて検討する必要があるのではないかと私は考えます。

その上で、我が国のインフラ海外展開のあるべき戦略を考える際、国富を増大すると共に、国際社会に貢献することを通じ、我が国の存在感・価値・不可欠性を高めることが大切なのは言うまでもありませんが、一方で、私は、資源安定供給へのアプローチとしての位置付けも強化しなければならないと考えます。

なぜなら、国民の暮らしや産業を守り、支えることは国家の重要な役割であり、その観点からは、資源供給元とシーレーン等の確保は死活的に重要な課題であると考えるからです。資源というのは、エネルギー源としての石油、天然ガス、石炭などに限らず、ベースメタルから第4次産業革命やSociety5.0を支えるために必要なレアメタル・レアアースまでをも含みます。

とりわけ、レアメタル(レアアースを含む)については、世界的に分散されているとは言え、採掘コストや環境コストなどの観点から寡占状態にあります。しかも、今後の需要の急増が見込まれる中、資源ナショナリズムの動きも加速するでしょうし、アフリカをはじめ、資源国に対する各国のアプローチも活発になっています。

こうした中で、我が国としては、資源供給元国やシーレーン等関係国が「自律的に」政策判断できる環境の整備、裏返して言えば、当該国が基幹インフラの多くを特定国に依存せざるを得ない環境の回避、に貢献することが基本的なアプローチであるべきと考えます。

以上を踏まえ、我が国のインフラ展開の基本的な考え方に関する私見は下記の通りです。

①我が国の経済安全保障上、特に重要な国・地域(※)を特定し、インフラ投資を重点化すること。

※戦略的に特に重要な国・地域(SIP/SIC:Strategically Important Partner/Country)

②SIPのうち、国家運営の基幹となるインフラ(エネルギー、情報通信、物流等)について自律的な政策決定が困難と判断される国については、我が国の戦略上の優先順位を上げること。

③(我が国に強みがあるインフラを展開することに専心するのではなく、)飽くまで相手国のニーズを踏まえ、相手国の経済発展(雇用創出、技術・ノウハウ移転、財政持続性等)に資する投資(手法を含む)を行うこと。その際、相互信頼に基づく協調的なアプローチを原則とすること。

④民間企業による自発的な展開を基本としつつも、SIPのうち、事業性や安全性を理由に民間投資が困難と判断される国については、国の事業として実施することや、国による支援の抜本的な拡充を含め、国が積極的にリスクテイクすること。

⑤インフラ海外展開に関する競合国の能力や動向等を踏まえ、他国との連携を含め、戦略的に対応すること。

⑥省庁・分野横断的に連携して対応すること。(例えば、SIP対象国のニーズと我が国が活用し得るツールを把握し、一覧性を持つ形で整理した上で、SWOT分析を行うなどの仕組みを設ける)。

更に深堀りしていけるよう検討を続けてまいります。

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