東京電力柏崎刈羽原子力発電所における核物資防護設備の機能の一部喪失事案を受けて②
前回のブログの続きです。過日の衆議院経済産業委員会と原子力問題調査特別委員会の連合審査において、東京電力の小早川社長、原子力規制委員会の更田委員長、梶山経産大臣に対し、下記の質疑を致しました。
質疑の模様は下記からご覧いただけます。
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51741&media_type=
〇 次に規制庁に伺う。昨年の改正炉規法の施行によって、新たな仕組みができた。今回、「常駐検査官」が東電の体制の欠陥を見つけられたことは確かに良かった。しかし、同時に、これで済ませて良いのか?腑に落ちない点もある。それは、核セキュリティ事案の評価区分において「赤」が最重要とされているのだが、今回はなぜ、いきなり「赤」になるのか教えて欲しい。
つまり、普通に考えると、「白」、そして「黄」と順を追うのが自然だと思う。「赤」になると、発電所の規制対応区分は「Ⅳ」。「Ⅳ」=事業者が行う安全活動に「長期間にわたる」又は「重大な劣化」がある状態、とされている。「長期間にわたる」前にきちんと把握していれば、ここまでにはならなかったのではないか。東京電力のプレスリリースには、昨年の10/12-16に東電から規制庁に2019年度の報告があったともされている。事案から一年近くも見つからなかったのは不自然。常駐検査官がいて良かったというのではなく、改善すべき点をもっと真剣に考えるべきではないか?
〇 私は、規制庁の方々は重責を担っていると考える。したがって、東電に厳しく対応するだけではなくて、国民の安全と信頼を確保するために「自分たちに」更に何ができるのか、何が必要なのかを徹底的に考え、対応をいただきたい。いずれにしても、本件の再発防止策についてはもう答えを求めることはしないが、テクノロジーの進んだ時代なので、人の手を介するものはできるだけ自動化、機械化し、ヒューマンエラーを減らしていくしかないと考える。
〇 最後に、梶山大臣に伺う。昨年末に、自民党の新国際秩序創造戦略本部でとりまとめた提言の中に、「戦略的自律性の確保」という概念を盛り込んだ。端的に言えば、「国家の脆弱性の解消」。いかなる事態が生じても国民生活を維持できるように、その基盤となる産業について精緻なリスクシナリオを作り、脆弱性を洗い出し、それを解消していく作業を現在各省庁に依頼している。
エネルギー産業はその中でも最重要産業の一つであり、その中でも原発は特別に位置付けられるもの。既にきちんとしたリスクシナリオがあれば、今回のような、更田委員長の言葉を借りれば、「非常にお粗末な対応」は起こらなかったと考える。厳密にいえば、本件は経産省の所管ではないが、原発事業を所管する立場として、また、政治家として、原発のリスクシナリオについてどう考えるか?
※ 以下は、時間が足りなかったため、言及はできませんでしたが、私の問題意識でもあるので、参考までに記します。
〇 本件は、一歩間違えれば、国民の安全を脅かすことになりえた事案であると同時に、わが国の核セキュリティに対する国内外の信頼を揺るがしかねない事案。例えば、日米原子力協定の相手である同盟国アメリカにどのような印象を与えたのか。当然、米国当局との間では既にコミュニケーションがとっているとは思うが、しっかりとした対応をお願いしたい。逆に、テロリストたちには日本の核セキュリティの甘さ、脆弱性を宣伝することになったのではないか。間違ったメッセージとならないように、リスクシナリオの話とも関係するが、想定外のことがないように入念な備えをお願いする。