(講演録①)これからの政治に求められる姿勢と保守政治の本質について
8月9日(金)に京都で開催された元衆議院議長伊吹文明先生のサマーセミナー『令和の時代を如何に生きるか』で講師を務めさせていただきました。
茶道裏千家の前家元である千玄室大宗匠はじめ、そうそうたる講師陣の中で、稲田朋美衆議院議員と共に、『令和の時代の政治を担う覚悟』というセッションでそれぞれ30分ずつお話をさせて頂きました。その講演内容を文字に起こしたものを何回かに分けてブログに掲載させて頂きます。
「講演録①:これからの政治に求められる姿勢と保守政治の本質について」
衆議院議員の小林鷹之と申します。千葉県からやってまいりました。フォーラムとは関係ありませんが、ただ今、地元の市立習志野高校が甲子園で沖縄尚学高校と戦っていて、5回表を終わって3対3。私が話し終わる頃には、試合は終わっているかと思います。本日は、日頃からご指導いただき、尊敬する大先輩である伊吹文明先生のフォーラムでお話させて頂く機会をいただき心から感謝をしております。感謝という次元を超えて、本セミナーの最後のスピーカーが私であることに大変恐縮しておりますが、今朝の千玄室大宗匠の話の中で、「国会議員は国のために命を捨てる覚悟で臨め」というお言葉を頂き、身が引き締まる思いですし、これからの政治人生に生かしていきたいと思います。
今日は、「令和の時代の政治を担う覚悟」と題されておりますが、私からは、まず最初に、伊吹先生からご指導いただく中で、国内外の様々な情勢を見ていて、これからの政治に求められる姿勢のあり方について私なりの考え方を申し上げます。その上で、まだ当選3回ではありますが、私自身が政治家として何を目指しているのか、お話させていただきます。
今、世界に目をやると、ホルムズ海峡の緊張の高まり、米中対立は激化し、朝鮮半島情勢は不透明。国際情勢が流動化しています。また、日本国内も含め、世界各地でいわゆるポピュリズムが台頭しつつある国際政治の中で、感じることがあります。
それは、この講演の副題にある「揺るがぬ信念・寛容な姿勢」とは裏腹に、「揺るがぬ思い込み、すなわち独善と、偏狭な姿勢」が蔓延しつつあるように感じます。
その中で、日本が国際社会において毅然とした立ち振る舞いをするには、政権与党である自民党が本当の意味での保守政党として、責任あるかじ取りを担い、「秩序の中に自由を求める自立した国家」を目指す必要があります。
伊吹先生の勉強会で稲田先生たちと一緒に「真の保守主義」とは何かを学ぶ中で、私の中での「保守主義」が立脚する原点は、自分自身も含め、人は不完全な存在であり、常に過ちを犯しうる存在であることを真摯に認めることだと考えています。今朝の大宗匠の話にも、「人間は未完全」であるとの言葉がありました。
京都大学名誉教授の佐伯啓思先生が「西田幾多郎先生」に関するご著書の中で、洋の東西を問わず、「哲学に関しては、思い上がりを捨てて、自らの無知を自覚することが第一歩である」と指摘しています。
その西田幾多郎先生は、自分と徹底的に向き合い、自己の底をのぞき込み、その底を突き破った、その果てに普遍的で絶対的なもの、いわゆる「無」、「絶対無」を見出されたわけですが、そこの境地にたどり着くことは私のような凡人には難しいことではあるにしても、自分が過ちを犯しうる存在であることを真摯に受け止め、謙虚であり続けようと意識することはできると思います。
そうすることで、自分一人の“ちっぽけな”理性に頼るのではなく、夥しい数の先人たちの経験や英知の結集が詰まった「伝統」や「慣習」を重んじる姿勢につながっていきます。そこで大切にすべきことは、自立する気概や、他者への思いやり。また、家族、地域、国家への帰属意識、また、過去・現在・未来と続く縦の時間軸の中で形成される共同体への帰属意識といったものの価値をしっかり認めていかなければなりません。
イギリスの保守の政治家であり思想家でもあるエドマンド・バークは、フランス革命について、あと先考えることなく、ただ闇雲に既存のシステムを壊した姿勢を痛烈に批判しました。大切なのは、歴史の流れ、慣習の体系、伝統の精神の重要性を認識して、既存のシステムをいかに活用していくかを常に念頭に置くこと。そして、改革や変化は、急進的に行うのではなく、できる限り徐々に漸進的に行うこと。また、権力についても、むやみやたらと振りかざすのではなく、権力の行使については自ずと抑制的であること。
こうしたことが保守の政治姿勢だと私は思います。国際政治が流動的であればあるほど、目先の事象にとらわれて近視眼的に判断する行為は慎まなければならないし、ましてや、判断を感情に委ねるなどもってのほか。歴史をしっかりと振り返ることによって中長期的な未来を見据えながら着実に国家運営を進めていく姿勢が大切になってくると思います。
以上、これからの政治に求められる基本的な姿勢について、私なりの考え方を申し上げました。
(講演録②に続く)