(講演録④) イノベーションについて

そして、先ほど述べたイノベーションについても触れたいと思います。

 

皆さん、日本のイノベーションの現状は、世界の中でどの位置にあるのかご存知でしょうか?

昨年、本庶佑先生がノーベル賞を受賞されました。自然科学分野では日本人としては23人目、この人数は世界で5番目。凄いですよね。また、ノーベル賞まではいかなくとも、素晴らしい技術やノウハウが日本にはたくさんあります。

一方、世界のトレンドを見ると、日本のイノベーション力や大学ランキングといった様々な指標は、年々、低下傾向にあるというのが悲しい現実です。

 

しかし、私はここで負けているわけにはいかない、そう強く思うんです。日本のイノベーション力を高めて、いかに国富を増やし、国益を護り、日本の国際社会の中での存在感を高めていくか。私は政治家として、ここにこだわっていきたいと思っています。

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では、日本はどこで勝負するのか。勝負できるフィールドはたくさんあります。例えば、その一つが、リアルデータです。

インターネット上のバーチャルデータについては、残念ながら、既に、GAFAのような海外の巨大プラットフォーマーが掌握してしまっている中で、日本企業が対抗することは難しい。

ですが、日本には、良質なリアルデータが豊富にあります。例えば、健康医療データ。世界に冠たる国民皆保険制度を持つ日本には、質が高くて膨大な健康医療データがある。この健康医療データのプラットフォームができれば、予防医療や、創薬の分野で、世界をリードするようなイノベーションを起こしていけるし、私たちのQOL、人生の質の向上にも大きく貢献できると考えます。

 

今後、この健康医療分野を含め、データドリブンと呼ばれる、データ駆動型社会が到来する中で、そのリアルデータで世界と勝負するためには、それに伴う情報インフラも必要になってきます。昨今話題になっている5Gは、次世代通信システムのことですが、現在の4Gから比べると通信速度が100倍、通信容量が1000倍となって、私たちの生活や社会が大きく変わります。 

 

ところが、こうした分野で世界各国がしのぎを削る中で、わが国の情報インフラ整備は決して進んでいるとは言えません。日本が5Gあるいは、更にその先の6Gの分野で世界と勝負するには、それに見合った情報通信インフラ、つまり、無線通信基地局、それらを有線で結ぶ光ファイバー網、そして膨大なデータを集積する巨大なデータセンターの3つが必要だと私は考えています。

 

米中対立の中で、ファーウェイなどが名指しで批判されていますが、私は、以前から、国会質疑や党の会合の場においても、こうした情報通信インフラは、セキュリティの観点からは、可能な限り国産のシステムを構築することが望ましいと主張してきています。今、5G対応の無線基地局ひとつとっても日本企業のものは殆どありません。世界のマーケットを見ると、北欧のノキアやエリクソン、中国のファーウェイやZTEなど海外企業が大半のシェアを占めています。しかし実は、そこには日本企業の多くの部品が使われているんです。目指すべきは、単に部品を供給するサプライヤーの立場に日本企業が終わるのではなく、完成品あるいはシステムを作る立場になる、ということで、政府もしっかりとサポートしていく必要があると考えます。

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日本が勝負できるところはたくさんありますが、急がなければならないことの一つが、この情報インフラです。勝負する分野が5Gなのか、あるいはその先のポスト5Gなのかは別として、今申し上げたことを本当に実行しようとすると膨大な資金やリスクテイクが必要となります。だからこそ、決断が必要になるんです。それは政府が行うには難しいこと。やはり政治がリーダーシップを発揮して、制度を後押ししていかなければならない。その思いで、今、この分野に力を入れています。

 

以上、私が目指す国のカタチ、国力のマトリクスについてお話させて頂きました。

 

(講演録⑤に続く)

 

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