(講演録③)教育について
これら「経済」と「安全保障」を根底で支えているのが、「イノベーション」。イノベーションとは、「技術革新」と訳されることが多いですが、私の場合は、より広く捉えて、「世の中に対して新たな価値を生み出して、社会を大きく変えていく」こととして捉えています。
皆さんもGAFAという言葉は知っていますよね。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったアメリカの巨大企業がデジタルプラットフォームを作って、世の中を大きく変えています。こうした動きに対して、日本はどう対応していくか、この点についてはのちほど触れたいと思います。
重要なのは、そのイノベーションを起こすにあたって、そのイノベーションの種、いわゆるシーズを見つけるのも「人」ですし、社会から求められているもの、いわゆるニーズを見つけるのも、結局は「人」だということなんです。シーズをイノベーションに結びつけていくのは人。AI、人工知能にしても、そのデータをプログラミングするのは人、新しい技術を社会的価値のあるものへと繋げていくのも人。つまり、経済、安全保障、イノベーションすべての基盤になるのは「教育」だということです。
そして、更に重要なことは、イノベーションは社会に役立てられなければならないものであって、決して悪用されてはならないということです。その意味で、イノベーションを創出する人たち、また、その成果を利活用する人たちは、単に知識を積み重ねるのみならず、教育を通じて、価値判断の基となる倫理観を醸成し、哲学も深めていかなければなりません。
やや話はそれますが、政策に携わる政治家も同じです。昨年、党の政治制度改革実行本部という組織で、議員力の向上について検討する担当となりました。「議員力」と言っても選挙力や政策力など、色々ありますよね。その中で焦点を当てたのは「教養力」です。私が議論のたたき台として当時作った紙を持ってきたので、ここで一部を読み上げますね。
教養とは:単なる知識の集積ではなく、個人が社会と関わり、経験を積み、体系的な知識や知恵を獲得する過程で身に着ける、ものの見方、考え方、価値観。
【教養の要素】
1.主体性ある人間として向上心や志を持って生き、より良い新しい時代の創造に向かって行動する力
2.伝統・文化・歴史に対する深い理解
3.他者の立場に立って考える想像力、及び他国や地域の伝統・文化を理解し、互いに尊重し合う資質
4.自然や物の成り立ちを理解し、論理的に対処できる能力
5.倫理的課題を含め、科学技術に対する正確な理解と判断力
6.語学、特に論理的思考力や表現力の根源である国語力
7.古典に対する深い理解
8.礼儀・作法をはじめとする「修養的教養」
以上が、そのたたき台の紙にした内容の一部です。
言うは易く、行うは難し。もちろん、こうしたことは人に言われるものでもないですし、大人であれば自分自身でやるべきことなんだろうとは思います。いずれにしても、こうした土台があってこそのイノベーションだと思いますね。
繰り返しになりますが、私が目指す国のカタチを創るために必要なことを、「経済、安全保障、イノベーション、教育」、この国力のマトリクスの中に具体的な政策として落とし込んでいくのが私の今後の課題だと捉えています。
(講演録④に続く)